28年ぶりのメダルとなる銅メダル獲得の歓喜に沸いた2012年ロンドンオリンピックから約9か月。新生・火の鳥NIPPONが、データバレーを掲げる眞鍋政義監督のもと、2013年5月、新たなスタートを切った。
チームの司令塔・竹下佳江や、大黒柱だった大友愛といったメダリスト達が現役引退を表明した中で、2009年から4年間キャプテンを務めた荒木絵里香に代わり、新キャプテンに指名されたのは木村沙織。2003年ワールドカップで高校生として全日本デビューを果たしてから10年。木村沙織が率いる火の鳥NIPPONが、2016年リオデジャネイロオリンピックでさらに輝く色のメダルを掴むために飛び立った。
「世界一を知る」を今シーズンのキーワードに掲げた眞鍋監督。約1か月に渡るヨーロッパ遠征を5月から6月に実施し、まさに「世界一を知る」武者修行を行った。シーズン初の公式戦となったモントルーバレーマスターズは5位に終わったものの、大会のベストスパイカーに日本の長岡望悠が選ばれるなど、次世代を担う選手たちに確かな手応えを残した。そこからチームは着実にレベルアップを図り、イタリア4カ国対抗では開催国・イタリアをフルセットの末に破るなど、この遠征で新チームの土台づくりが行われ、価値ある1か月となった。
武者修行の成果を試すべく挑んだFIVBワールドグランプリ2013は、開幕から6連勝。ドイツやポーランドといったヨーロッパの強豪を相手に怯むことなく立ち向かい、そして白星を重ねるごとに新生・火の鳥NIPPONはそのチーム力を高めていった。しかし、予選ラウンド第3週の仙台大会では、ブルガリア・アメリカに連敗。チェコに勝利し一矢報いたものの、高さとスピードを誇る相手に対して互角に戦うために何が必要なのか、また眞鍋監督が「立ち上がりが課題」とコメントするなど、課題点も明確になっていった。
FIVBワールドグランプリ2013ファイナル札幌大会では、イタリア・ブラジル・セルビア・中国・アメリカという世界のトップレベル5チームと顔を合わせた火の鳥NIPPON。結果は6チーム中4位であったが、キャプテン・木村沙織と両輪の活躍を見せるもう1人のエース・江畑幸子、安定したレシーブ力を誇る新鍋理沙といった銅メダリスト組に加え、元全日本男子チームで活躍した大竹秀之を父に持つ大竹里歩、所属の久光製薬スプリングスを3冠に導いた長岡望悠、石井優希といった新戦力の活躍も光った。リベロも座安琴希、佐藤あり紗の2名が熾烈なポジション争いを繰り広げた。
9月4日から21日にパークアリーナ小牧(愛知県)で行われたFIVB世界選手権2014アジア男女最終予選小牧大会では、来年にイタリアで開催される世界選手権への出場権が懸かる試合とあって、結果を求められる試合となった。初戦のチャイニーズタイペイ戦、2戦目のベトナム戦と大会が進むにつれて、徐々にプレッシャーも解かれ、岩坂名奈、近江あかりといった次世代を担うメンバーがその実力を発揮。9月8日未明には2020東京オリンピックの開催も決定し、勢いそのままに最終日まで日本は全勝で駆け抜け、タイとともに見事、来年の世界選手権への切符を獲得した。
その後、9月13日から21日にナコンラチャシマ(タイ)で開催された第17回アジア女子選手権大会で、アジアの頂点を狙った火の鳥NIPPONであったが、決勝戦で開催国のタイに敗れ準優勝で本大会を終えた。タイはアジア大陸の代表として、日本は開催国として、ワールドグランドチャンピオンズカップ2013のコートで再び顔を合わせることになった。
日本はワールドグランドチャンピオンズカップ2013(グラチャンバレー2013)の開幕を控えた10月、同大会のエントリーメンバー20名を発表した。メンバーの中には、中道瞳、迫田さおりのロンドンオリンピック銅メダリスト2名も復帰。また、新メンバーとしてセッター・永松幸乃が全日本に追加招集され、注目を集める。
「世界一を知る」をテーマに掲げた2013年。今シーズンの集大成となるグラチャンバレー2013で、火の鳥NIPPONはどのような布陣で臨むのか?銅メダリストと新戦力の融合は?日本はアジア選手権大会を制したタイに雪辱を果たすことができるのか?そして、グラチャンバレーで2001年大会(銅)以来2度目となるメダル獲得なるのか?火の鳥NIPPONの活躍から目が離せない。
2012年5月に行われたロンドンオリンピック世界最終予選では、全体の4位(アジア3位)という結果に終わり出場権を逃した全日本男子チーム・龍神NIPPON。チーム再建を託されたのは、全日本の男女を通じて初となる外国人監督、日系アメリカ4世のゲーリー・サトウ監督。サトウ監督が目指すのは、「正しい状況判断が備わらなくては勝てない」という独自の哲学に基づいた「スマートバレー」。監督内定後、3月末に来日し、Vリーグなどを精力的に視察。新しい体制となったチームスタッフとともに、リオデジャネイロオリンピックに向けて第一歩を踏み出した。
新チームのキャプテンには、ベテランミドルブロッカーの山村宏太を指名。抱負な経験と抜群の統率力を誇る山村がコート内外でチームを引っ張る。また、年齢的にも中堅となった福澤達哉は、コートの中心でチームに勢いをもたらす。全日本に復帰の越川優、激しい雄叫びでチームを鼓舞する石島雄介らがより一層チーム力を高めるとともに、所属の堺ブレイザーズを2012/13V・プレミアリーグ優勝に導く活躍を見せた横田一義、最優秀新人賞を獲得した千々木駿介といった若手有望株も控える。
ゲーリー・サトウ新監督の公式戦初采配となったFIVBワールドリーグ2013。6月1日のインターコンチネンタル・ラウンド初戦から4連敗スタートと苦しい戦いになったが、迎えた小牧大会では、北欧の強豪・フィンランド相手に2連勝。新チーム始動から1カ月に満たない中でも、トスが合わないときは相手ブロックを利用しリバウンドを取って体勢を立て直してから攻撃する、ブロックアウトを狙うなど、「スマートバレー」に確かな手応えを掴んだ試合となった。さらに7月に行われたインターコンチネンタル・ラウンド最終週の大阪大会では、本大会最終5位に入った強豪・カナダに対してフルセットの熱戦を展開するなど、粘り強さも見せた。
9月上旬にパークアリーナ小牧(愛知県)で行われたFIVB世界選手権2014アジア男女最終予選小牧大会には、清水邦広が怪我から復帰。日本は、カタール、ニュージーランドをともにストレートで下し、韓国との最終日全勝対決に臨んだものの、敗戦を喫した。
その悔しさをバネに日本は、9月下旬からアラブ首長国連邦(UAE)で開催された「第17回アジア男子選手権大会」に臨んだが、日本は準決勝でこの大会で優勝したイランに敗れ、最終的には4位で本大会を終えた。しかし、復帰明けの清水が調子を上げるなど明るい話題もあった。
前キャプテン・宇佐美大輔が務めていた全日本のセッターのポジションは、近藤茂、今村駿が立派に務め、またアジア選手権大会ではセッター・深津旭弘が新戦力として台頭した。リベロには熱い気持ちでプレーする永野健と高橋賢。日本のコンビネーションバレーを支える要として、今後の龍神NIPPONはセッター、リベロにも注目だ。
福澤は抜群の跳躍力とスピードを誇る攻撃力でチームの得点源として中心的役割を担う。スパイクも試合を重ねるごとに安定感を増し、頼もしい存在に。一方の清水は、今シーズン序盤、怪我による離脱を経験したが、復帰後は、日本人離れした強靭な肉体に一層磨きをかけ、そのスパイクは世界レベルであることを、活躍で証明している。
開催国として挑むワールドグランドチャンピオンズカップ2013では、ブラジル、ロシア、イラン、イタリアといった各大陸の強豪に加え、ゲーリー・サトウ監督の母国・アメリカとも対戦する。今大会を監督は「挑戦」と「チャンス」と表現した。各大陸王者を相手にどのような戦いを見せるのか、非常に楽しみである。
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